映画を見る時の気分というのは区々で、アクションものが見たいとか、泣けるドラマが見たいとか、あまり多くはないが芸術的な作品に触れてみたいとか思ったりする。今回『騙し絵の牙』を見る時の気分というのは、邦画の多くがそうであるように、気楽に見られて、字幕を追ったりするわずらわしさが無いものという気分である。特段大きな期待をしていたわけでも、前評判に目を通したりしたわけでもない。最近NHKの大河に出演している『大泉洋』が主演していたので気になったという理由で視聴した。
視聴後に調べてみると、本作は原作者の『塩田武士』氏が大泉洋氏を「あてがき」して書いた小説の映画化だそうで、なるほどズバリはまり役であったのが頷ける。ストーリーは、社長が急逝し会社経営を巡って内紛に色めき立つ出版社で、リストラ、廃刊を巡り古参の文芸誌とカルチャー誌が対立する。そのカルチャー誌の編集長としてやってきたのが大泉洋扮する速水氏。斬新なアイデアで次々とカルチャー誌立て直しを図るが、その手練手管は綺麗ごとだけにとどまらず、根回し、手回しが入念に施されている。
映画としての評価はそれほど高くはなく、興行成績もあまり振るわなかった。コロナ禍での公開であったことや、アニメや特撮などに比べて映像的にその時期わざわざ映画館に行って見るべき映画であるのか?という点で不利であったのかも知れない。

しかし、NETFLIXで配信されているとなると、話は別である。テンポの良い展開に、くるくると表情を変える登場人物たち。その中で一枚上手を仕掛けるのはだれか?なかなか見ごたえのある映画だと思う。
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