新聞記者 Netflix Original Drama

Review ~ 読書&視聴 ~

昨日、Netflixで最近配信され始めたドラマ『新聞記者』を一気見してしまった。

ドラマは、森友学園問題をモチーフにしたフィクションであるが、起きたであろうこと、起きたかも知れないと視聴者が思えるような展開で物語が進んでゆく。例えば、自殺をした地方公務員の家に、遺書を探しに黒づくめの拳銃を持ったチームが侵入するとか、その危機を察知した記者が奥さんを救出するといったような事は起きないし、メモリースティックをめぐってのカーチェイスも起きない。また全編を通じ抑え気味でスタイリッシュな演出と、演技に全振りしたキャスティングになっている。例えば、吊り橋効果でのロマンスも、キャッチ―でコミカルな決め台詞も、どうしても出演させなければならないアイドルも出てこない。

この作品は2019年に公開された同名の映画『新聞記者』と同じ監督のドラマ化であるが、内容は大きく違う。映画は望月衣塑子の『新聞記者』を原作として、女性記者記者本人に焦点を当てていた。しかしドラマは事件そのものに焦点を当てており、 組織と個人の倫理の対立が執拗なまでに繰り返しクローズアップされる。その中で壊れてゆく人、翻弄される人、何かを見いだしてゆく人、登場人物一人一人の揺れる心をなぞるようにドラマは進んでゆく。コンプライアンスという言葉は一回も出てこないが、主役はまさにコンプライアンスそのものと言える。誰の為の正義か?会社や組織を守るための不義や不正などというものが存在するのか?結局それは、権力とか権威とか「あとからとってつけた化けの皮」が剝がれないように取り繕うためだけのものではないのか?

以前読んだ本(HUMANKIND)で人間は生来善良であり、悪事を働くためには強い動機づけが必要となると書いてあった。元来善良なはずである人間が、「組織の為」あるいは「仕事だから」といって個人の自由な意思であれば選択しないであろう方の紐を引っ張るのは、個人のモラルに反し後ろ暗い罪悪感を引き起こし、心を病んでしまう。

映画と見比べてみて思う事
  • 映画よりもテーマが絞られていてわかりやすい
  • 背景となる社会問題がアップデートされている
  • 登場人物をより身近に感じることができる
  • 内閣情報調査室の多田室長(田中哲司氏)は唯一のかぶりキャラ?
合わせて読みたい本

米倉涼子が演じるこの主人公の新聞記者のモデルとなっている望月氏の著書。今回は彼女の「官房長官へ食らいつく姿勢」がドラマの中でオマージュされている。すらすらと読める本であるが、かなり主観的な書き方になっているので、個人の日記を読んでいるようでもある。

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