After Life

Review ~ 読書&視聴 ~

クリンジ・コメディという分野は、生きるのが不器用な人々が、社会に適合できない

イギリスのTVドラマはこの手のコメディが散見される。かつて見ていた『ハイッ こちらIT課』や有名なところでは『ミスター・ビーン』等がこのジャンルであるが、日本ではまずないジャンルである。

主人公は最愛の妻を亡くした事により、生きる意味を見失い自殺を考える地元のフリーペーパーで働く記者。演じるのは原案、監督、脚本も務める『リッキー・ジャーヴェイス』氏で、同氏は2001にBBCで放送され旋風を巻き起こしたシチュエーション・コメディ『ジ・オフィス』で演出・脚本を手掛け主演を演じている。

その他の登場人物はゴミ屋敷の住人、パフォーマーだと自認するニート、娼婦と付き合う路上生活者の郵便配達員などなどそうそうたるメンバー。しかし、ギャグや人を笑わせようとするようなセリフは一切出てこない。社会に受け入れてもらえないという疎外感や孤独を噛みしめながら真面目に不器用に生きる人々の苦闘を淡々と描くドラマである。その赤裸々さ、ひたむきさ、周りから浮いてしまう様に思わず、笑ってしまったり、同情したりしながら、これほど極端ではないにしても、世界は実に変人で溢れかえっているのではないかとおもってしまう。

一方、したり顔で好き勝手なことを言う精神科医や、不器用な人たちを見下すようにして我が物顔にしている人たちこそが、実は社会にとって最も有害な人々なのではないかと思えてくる。

一つのシーズンは一話30分のエピソードが6話。現在シーズン3が公開されている。シーズン1で妻を無くしたばかりで自暴自棄となった主人公は、自殺願望にとらわれ、周囲に対しては嫌味や悪態ばかりついていた。シーズン2、シーズン3では職場の仲間、末期の父親の看護師、仕事の取材で出会った人々、地域の人々といった様々な人々のふれあいの中で主人公は、周囲の人々にも悲しみや孤独を抱えている事、そして皆が様々な形で境遇に向き合いながら生きている事を学んでゆく。

飼い犬と、ノートPCで見る奥さんのビデオに癒されながら、次第に立ち直ってゆく主人公の姿は心を打つ。優しい気持ちになれるドラマだ。

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